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Vol.169
退職して…
西原寿加さん
 私ね、結婚して退職したんですけど、34歳の時に再就職して、それから33年間、今年の5月まで仕事をしました。それも、いろんな人に迷惑をかけながら、家族にもいろんな迷惑をかけながら、続けられたと思って、今はいろんな気持ちを振り返りながら、いろんなことを感じています。
 今、こころ静かに考えたら、無駄なこともいっぱいしてきました。
 例えば、ご飯作るにしても、食材ですね。今までだったら捨てていた部分も、これって、湯がいて、お酢で和えたら一品できるとか。そういう細々とした生活の中の知恵が働いてきて、“あっ、私が学ぶべきもの、行き着くところは、こういう細かなことに気づくことなのかな”と、今、気づかしてもらえる自分っていうのがすごく嬉しくてね。

 そうしましたら、今、家の庭に芙蓉の花が咲いとんですけど、毎日、台所からご飯しながら、“今日はなんぼ咲いたかな?”と。今日は最高、18個、咲いとんです。今までは忙しくて、花が咲いても綺麗だとか、しみじみ見られるような気持ちじゃなかった自分がいたんですけど、“あっ、今日は花が綺麗に咲いとる”と。
 庭も、本当、草ぼうぼうの土地が広いんですけど、主人も退職して、一つ一つピンセットで草を抜くが如く、綺麗にしてくれています。昔は人が来たら、草ぼうぼうで、ちょっと恥ずかしいなと思っていたんです。でも、今はこんなに綺麗になっても、コロナで人も来てくれないし、今、人が来てくれたら良いなぁとかって感じてます。

 職を終えて、体力的にはもう少し頑張ればできましたけども、“ここが、自分が退職する時期だ”と思いましたので、思い切りましたけど、それがやっぱり、良かったんですね。
 今まで放ったらかしにしとった会員とか、どういうふうに接したらいいかわからなかった地域の人たちに、ちょっと思いを寄せられるような“こころ”ができてきたんです。
 今まで近所の人とかは、忙しくて……。でもね、こころの会の会員だけやなくて、近所の人、地域の人がどんなに大切だったか。こころの会以外の人と接することが、本当はね、あんまり接したくない。もう職場の人だけで、結構、それ以上の人とは、もう接したくないという気持ちの時もあったんですよ。
 でもね、今、近所のおばちゃんとかそういう人たちと話すことは、“あっ、自分にとってはすごく大事なことだった”と、ちょっとだけ気づくようになりました。それで、今は一生懸命、仕事をしてきたけれども、それはそれで置いとって、今度は、これからの人生、自分の周りにいる人たちに“こころ”を向けられるようになったんで、今、とても嬉しく感じています。