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涙が出ちゃった…。
稲葉五男
 昨日、孫の幼稚園の学習発表会みたいなものがあって、何年かぶりに涙が出ちゃったんですね。うちの孫は今、年長さんで6歳になったんですけども、6年前、産まれる時に“生きるか死ぬか”みたいな感じで“いのち”を授かって、6年間、生きてきたんです。
 去年、自閉症スペクトラムっていう病気が診断されまして、自分もその病気を知って関わる中で、いろいろと教わることがいっぱいなんですよね。その過去を振り返りながら、“ここまで成長したか!”っていうことで、たぶん、涙が出たんだと思うんですね。

 自分としても“なんでこんなに、こう……?”、昔は“他人の不幸は蜜の味”じゃねぇんだけども、涙なんか出すような自分じゃなかったんです。だけども、孫のことで涙が止まらなくなって……。
 教わることがすごくいっぱいあるんですよね。
 孫は時々、なんていうか、キレちゃう感じなんですよね。言葉もそうなんですけども、その時に“自分はどう対処したらいいのかなぁ”と思ったら、孫が「じいちゃん、じいちゃん」って、自分のところに来るんですけども、やっぱり、抱きしめてあげる。
 今まで抱きしめてあげるっていうのは、自分の子どもにもしてなかったんですよ。だから、孫ができて、初めて抱きしめるっていうことで、すごく、こう、落ち着くんですよね。

 で、今までの自分は、自分の思っていることは言うんだけども、相手に聞くことがほとんどなかったんですね。でも、孫と関わることで「どうしたんだい?」と、優しく、こう、いろいろ話を聞いてあげられるようになってきました。
 それがいつの間にか、会社でも、今までは自分の目線で、自分の感覚で「それは、こーだ、あーだ」って言っていたのが、「何でそう思うのか?」って聞けるようになったんですよね。
 これも、“孫のおかげなのかなぁ”と……。
 今まで「人の話を聞く」とかなんとかっていうのは、簡単そうだったんだけども、やっぱり、自分が今まで生きてきた経験とか、思い込みじゃないけども、どうしても、自分の物差しで人を見ちゃう自分がいたんです。だけども、“そうじゃないんだ”っていうことを改めて気がつかせてくれた孫に、自分は“本当に感謝かなぁ”とすごく思わせてもらいました。
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