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このヒト、好かんき
山下順子
 地域で連絡員をさせてもらっているんですね。それで今、年度末だから“これからどうしようか?”っていう話しあいがあって、そのおばちゃんも連絡員だから来られていて、明日も「ちょっと、集まるきに、アンタも来んね」って言われたんですよ。
 でも、私は“この人、好かんき。行きたくない”と思っていて、前からその人とは天敵……、天敵やないけど、なんでイヤなのかと言ったら、15、6年ぐらい前に婦人会で役をしていた時に、敬老会の時にいつもお弁当を作るんですよね。地域でね。私たち年代が、みんなで手作りして、前の日にタケノコを掘ってきて 茹でてと、材料もなるべく地域にある物を利用して作っていたんです。
 だけど、前の日も朝4時とか、2日、3日がかりで大変だから、私が「そろそろ、仕出し屋さんに弁当をお願いして、そこからとるようにしたらどうですか?」っていう意見を出したんですよ。そしたら、それが通って、みんなに喜んでいただいたんですけど、そのおばちゃんは料理が上手で、いろんなことができる人なんですよ。
 それで「アンタ、要らんでいいことばっかりした!」ちゅうてね、“あぁ、この人とはもう、あんまり付き合わんがいいわ”と思っていたんですけど、やっぱり、あまりにも誘われるから“ちょっと、行ってみようかなぁ?”って、次の日、そのお茶飲み会に参加しました。

 話を聞いてみると、なんか、優しいんですね。近所のお婆ちゃんたちが一人になって、いろいろと食べ物が大変な時に、何か作って持って行ってあげたり、「この前は栗おこわして、〇〇さんに持って行ったのよ」とか、そういう話もいっぱい聞かしてもらったんですよ。
 そしたら、“あぁ、この人、根っから優しかったんだ”って。私の“その人、好かん”って思っていたこころが、“あぁ、その人、ホントは素敵な人だったんだ”って思ったんです。
 そしたら、その場の話もはずんで、いろんな話がでてきて、家の話もでてきて、「こうよね」「あぁよね」という話ができて、“あぁ、今日、なんか少し『聞く 語る』のつどいに近づけてるんやないかな?”って。とっても嬉しくなったんです。

 それで帰りに「今日はホント、誘っていただいて。いっつも誘っていただくのにキャンセルばっかりして、でも、今日は誘っていただいて、とっても楽しかったです。ありがとうございました」って言うたらね、その人も「またねー!」ちゅうて、手ぇ振って帰られたんです。
 そこで、私がなんか、そういう、断るっていうことで“意地悪してたなぁ”というのを、その人から教えてもらったなぁと。何回も何回も断るのに、ずーっと誘い続けてもらって、“無下に断っていて、あぁ、悪かったなぁ”という反省したら、私自身がすごく楽しくなって、“あぁ、良かった”って。
 今はコロナで、しょっちゅうはできないけど、「またしようねぇ。そしたら、元気になるねぇ」言うてから、帰って来ました。本当に“良かったなぁ”って、思います。これからも自分のできることをさせてもらおうと思いました。
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