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般若の面!?
宮田昌子
 3月いっぱいで、20年勤めさせていただいた会社を退職しました。
 50歳で、最初は6時間のパートで入ったんですが、すぐに社員になりまして、2年経ったら先輩が定年退職することになって、次に入ってきたのが24歳の女性でした。
 7年、一緒に勤めたんですけど、最初の2年ぐらいは和気あいあいだったんです。でも、その後がもう本当に、仕事が“ちぎっては投げ、ちぎっては投げ”と、そんな表現が合うぐらいの仕事の量だったんですね。
 だから、お互いに、知らず知らずのうちに、仕事に必死になっていて、相手が声をかけてきても気がつかない。逆に私がふっと終わって、声かけると相手も気がつかない。で、“なに、この小娘が!”って。24歳と、52、3歳ですからねぇ。それから、なんか調子が悪くなって、もう“フン!”って感じで、本当に話もしなかったんです。
 それで、それが続いていて……。でも、1年ぐらいが過ぎた頃、私も“15歳から在家仏教こころの会をやろうと思って、やってきて、どうやったら、その彼女と上手くやっていける自分になれるのかな?”と問いかけました。

 そしたら、2、3年が経った頃、今、副支店長になっている45歳の人が私の顔を見て、「どうしたの、宮田さん。今日は、般若の面、かぶって来た?」って言ったんですね。
 “般若の面?”と思って、その時は「やーだ。置いて来たつもりだったのに。まだ、かぶってた?」って言ったんです。
 だけど、席が離れていて、たまに私の前をウロチョロとする人が「般若の面、かぶって来た?」って言うぐらいの顔つきをしている。で、毎日、横に並んで仕事をしている彼女は、“どんな思いで、私の顔を見ていたんだろう?”って思ったら、“あぁ、これか!”って思ったんですね。
 その時に、たまたま銀行に行く用事があって、銀行に行って時間がかかるんで、彼女に“まだ大勢いるので、時間がかかります。なんか、ここんところ、あんまりムードが良くないっていうことは、ちょっと、コミュニケーションが足らなかったかなぁって、反省しています”というメールを送ったんですね。
 そうたら、しばらーくしてから“まだ、銀行ですか?”ってメールが返ってきて、“誰々さんがお菓子を持って来てくれたから、お菓子があるから楽しみに帰って来てくださいね”って。
 本当に3年近く、“フン! フン!”という態度で“もう、この小娘が!”と思っていた彼女が、メールを送ったことで「やっぱり、私たちコミュニケーションが足らなかったんですよね」という言葉もくれたんです。

 その後も1年ぐらい一緒に仕事をして、彼女は「子どもがほしいから、子づくり、がんばります!」と言って、辞めていったんです。
 で、考えてみたら、仕事をしながらでもそういうことは大丈夫なわけじゃないですか。でも、自分が気持ち悪いだなんだで、突然、休むと、仕事が私のところに被ってくるって。「だから、申し訳ないから早く辞めます」ということを後で聞かしてもらって、“あぁ、そうだったんだぁ”と思って、すごい嬉しかったんです。
 その彼女が、私が「辞めるって聞いた」と言って、本当にもう辞めてから全然、音沙汰がなかったんですが、ショートメールくれて。「宮田さんが辞める前に、会社に一度、遊びに行きます」と言って、遊びに来てくれたんです。それが、すごく嬉しくって!
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