ここまで来る前にさぁ、うちの親父のこと、許せなかったわけ。というのは、さぁ、うちの親父っちゅうのは、東京に出稼ぎに行って、冬になれば、帰って来るんですよ。
そして、帰って来るのはいいんだけれども、酒を飲むと酒乱になるんです。朝から酒ばっかり飲んで、自分たちが物心ついた頃から酒乱で、母親のお嫁に持ってきた時のタンスやら、うちのフスマやら、ガラス戸や全部、まさかりで壊してしまうんです。
そして、うちが古いものですから、天井が無くて、囲炉裏があるんですよ。タンスやら障子、フスマ、全部、壊して、その囲炉裏の中で炊くんですよ。一度は3メートルぐらい炎が上がって、「よく、家が燃えなかったなぁ」って。今、ホントにトラウマになって、残っています。
そして、毎年、毎年、冬になると、そういう繰り返し、繰り返しできて、自分が17歳、親父が49歳の時、“こんなに家族に迷惑をかけていたんじゃダメだ”と思って、“親父が出稼ぎから帰ってきたら、殺す”と。
“自分で家族の犠牲になって、みんな、母親やらきょうだいが仲良く暮らしてくれればいいな”と思って、17歳、親父と喧嘩しても負けない自信もありました。で、「出稼ぎから帰ってきたら、もう殺す」と自分で決めていました。
それで、帰って来る一週間ぐらい前に連絡が入って、「親父が脳卒中で倒れた」と。もし、あの時、そのまま帰ってきていれば、多分、殺していたでしょう。
それで昨日、同じ部屋にいた人が、同じ境遇で同じ話をしてくれました。父親をただ恨んできた自分でした。でも、そういう話を聞いた時に、“あー、やっぱり、同じ境遇の人もいるんだなぁ”と思い、全部は許せないですけども、「半分ぐらいだば、許してもいいなぁ」と。
同じ部屋にいた人は、「自分の父親と分かり合えた」と聞きました。でも、自分の父親はもう、あの世に行って、もう、昨年、十七回忌をやりました。
半分だけは、許します。
もう少し、自分でも在家仏教こころの会をやって……、全部、許せるようになりたいと思います。