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団塊世代「自分の改革」
服部三郎
 やはり、私も亭主関白ですね。けっこう、口うるさく言ってきまして、うちの家内っていうのはねぇ、ホント、黙ーってんですよ。今は明るいですよ。でも、結婚した当初は暗ーくてですねぇ、「イヤだ、イヤだ」言いながら、子どもだけは6人、できちゃったんですよ。そんで、育ててきたんです。
 僕は9年ぐらい前から、東京へ通いで仕事に行くようになって、始め時分は1週間にいっぺんぐらい、家に帰って来るという状態でした。家に帰って来ると、冷たーいですよ。ほんで、今までの自分だったら、カーッとなって怒りたいんですよ。でも、怒るとねぇ、1週間会わないと、いつまでも尾を引くんですよね。だから、なるたけ怒らないで、“我慢しょう”って。そっから、僕は自分の改革が始まったんですよ。
 それで東京に行きますと、お偉いかたの傍に居るもんですからねぇ、言われると返すことができない。僕はどっちかいうと、弱い奴には強く言って、強い人には小さくなっているっていうのが、僕の特権なんですよ。ですから、いろんなこと言われても返せない自分がいて、ある時、フッと思ったんですよ。“これじゃないかな!?”って。
 自分が偉い人に対しては返せない自分がいて、で、家内にしてみたら、僕に対しては返せない家内がいる。“これだなぁ。同じだな”っていうところをフッと思って、そうするとねぇ、今まで帰って来ると冷たかったのが、多少、“あったかくなったかなぁ”っていう感じだったんですよ。

 それで今年、60歳なんですよ。60歳で、8月が定年で辞めなきゃいけない。でも、「もう少し働いてもいいよ」っていうこともあるもんですから、“どうしようかな?”って迷っていて、ほんで、「俺、もう、今年の8月で辞めよう」って。でも、家内は「なに、言ってんの。生活、できない!」。
 最近は強くなってんですよ。結構ね、言うと返ってくるですよ。だけど、自分はね、そう言われると、反対に“クソーッ”と思うんです。“俺が仕事に行った間、昼寝して、働きに行っているわけじゃねぇんだから……”と、そういうことを自分のこころの中で思うんですよ。“クソーッ”と、こう、いろいろと思ってて、フッとこう思ったことはなにかって言ったら、「いや、待てよ」と。「そうじゃないだろうなぁ」って。

 自分が今、朝5時に起きて、ほんで、東京行くのに7時頃に出て行くんですけども、5時に起きた時には、ちゃーんと食事はできてて、ほんで、9時から9時半頃、帰ってくると、そうするとお風呂が沸いていて、夕食ができるようになってて……。
 “この人には、休暇っていうものは、ないのかなぁ? 僕は休暇なら一日中、寝てるよ”、そういうことをこう、フッと思った時に“ああ、そうじゃないな、こういうところが、自分が見えなかったところだなぁ”と思いがてら、そこからちょっと深く入りますと、僕は娘が3人いて、どの子の食事をとってもですね、おいしいんですよ。
 “子どもたちだけが、自分で作りがてら考えたわけじゃないな。家内が教えていたんじゃないのかな。そういうふうに育てあげたのは、家内だ”と、そう思ったんですよね。そうしたら、“あー、大きな仕事をしてくれてたんだなぁ”というところに、僕、気がつかさせてもらったんですよ。そうした時にね、本当に“あぁ、感謝だな”と。
 良いことはね、見えないんですよね。見えますか、みなさん? 僕、見えないんですよ。ほんで、悪いことは、すごく目につく。そうして、イライラ、イライラして、怒ったりしているんですけれども、そうじゃない、「そこに見えるというのは、自分が持っているな」というところに、気がつかせてもらってですね。それで、そこを自分が直させてもらうことによって、まわりが変わってきた。
 で、家内もですね、暗かーったイメージから180度、変わりまして、今、ホントに明るいです。ホントにもう、今、しあわせですよ、僕。みなさん、言わせてください。本当に、僕は今、しあわせです!!
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