No.76

父と向き合う

千葉県印旛郡 桑子治雄(60歳)

千葉の「全国こころの会」に出て、2回ぐらい簡単に話させてもらったんですが、昨年の7月、大正3年生まれのオヤジが亡くなりました。偏屈なオヤジだったんですが、亡くなった時に顔を見ましたら、ずいぶん安らかな顔をしていまして、腹が立ちました(笑)。
なぜかというと、オヤジは外面がいいんです。でも、私たち夫婦が田舎に行った時も、たまたまオヤジが一人でいまして、なんか機嫌が悪かったか知らないですけど、「お前らが来るところじゃねぇ、帰れ!」と、家に入れてもらえなかったことがあったりして、なんとなく“嫌なオヤジだなぁ”と思ってきたんです。また、ただ怒る。家庭の中で、昔の人ですからオフクロを叩いたりするということもあって、それを見て育ってきたので、なんとなく“許せない”気持ちがあったんです。
そんなことがいろいろあったもんですから、亡くなった時のオヤジの顔を見て、しゃくにさわりまして、私、通夜の時にお線香をあげながら、「あなたは」と語りかけました。「あなたはどうして、そんな安らかな顔をしているんですか?」って。「生きている時に私たちにそういう顔をしてほしかった」って言いました。本当に腹が立ちまして、次の日の告別式の最後まで“許せない”っていう気がずっとしていたんです。
それで、7月号の『大きな乗りもの』に、久保克児副会長の「お父さん」という詩がありました。読ませていただいて、それから、今月の20日にオヤジが夢に出てきました。顔は見せなかったんですけど、裸で、今までこんな穏やかな後姿も見たことないなっていうくらい穏やかな後姿で、私が背中を洗い、オヤジは気持ちよさそうにしている、そんな夢だったんです。
で、それをある時、支部長さんに言いましたら、「父ちゃんは昔の人だし、多少は腹が立って怒ることがあったとしても、正直だったよ」と。また、叔父に言わせると「馬鹿がつく正直者だった」と。家族が見てないところでは、結構、いろいろ気を使っていたということが、後からいろいろとわかりました。
子どもの側から見ると、一つだけ、“オヤジ、よかったな”っていうのは、決して私たちの前で人の悪口を言わなかったんです。そこだけは“父親として、よかったんだな”と思います。
“なんでそういうふうになってきたか?”っていうことについては、生まれたところでいろいろといろんなことがあって、しようがないのかなというふうに思えるようにはなったんです。
そういうオヤジだったんですけど、1年かかって、やっと穏やかな、生きていた時には見せなかった後姿で、背中を流せてよかったなって思います。
私も自分の子供から見れば、“しようがないオヤジだなぁ”っていうふうに、多分、思われていると思うんですけども、夫婦そろって親父の分まで一生懸命に生きたいと思います。

     お父さん   

 驚かないでよ
 お父さんが死んだ
 弟からの電話に
 しばらくご飯が
 ノドを通らなかった
 あのときから
 もう四十有余年(しじゅうゆうよねん)

 そして
 わが家の法座の
 過去帳の中の人となった
 お父さん
 あなたは
 今もなお
 わたしたちを護る人です
 月のはじめの
 七の日がめぐってくるたびに
 元気かと
 穏やかな笑顔が浮かんできます
 あなたを知らない
 あなたの孫や
 そのまた子らも
 あなたに挨拶をしています
 彼らのオハヨウが
 お父さん
 聞こえますか

 これからも
 ずっとずっと
 よろしく
              久保 克児

(「大きな乗りもの」2012年7月号)



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