No.65

相手の話に共感し、相手が聞ける状態になるまで待てる自分に。

大阪府和泉市 山内利己(56歳)

僕は今、大阪の堺市の区役所で、国民健康保険に関わる滞納整理の仕事をしています。平成二十二年四月に、今の課に変わったんですが、「ダメでしょ! すぐに払ってもらわな困るけど、月一万円ずつにしましようか?」と。でも、相手はその一万円が払えないです。

で、一番困ったのが、お歳を召した女性が来て、「夫の仕事がなくて……」と相手が泣いてしまうことです。そう言われると、なにも言えず、「今日、決められなかったら、いいですよ」と、一回は帰ってもらうんです。でも、それがものすごくイヤで、仕事から逃げたくて、逃げたくてしょうがなくなって、うつで八ヶ月、休んでしまったんです。

僕は一昨年の十二月に、“どうしても、この会に入れてほしい”と、自分から入会させてもらいました。“つどい”に出るようになり、“少し元気が出たかな”と思い、昨年の三月に職場復帰をしたんですが、最初はしんどかったです。

復帰後も窓口に来た人に対して、“払わない、あんたが悪いや”という気持ちでやっていたんです。そうすると、役所の規定で話をするんですが、相手には聞いてもらえず、払ってくれるのは十人中一人ぐらいでした。“どうしたらいいのかな?”と思い、近畿・山陰ブロックの一泊セミナーに参加し、そこで「うつで仕事を休んでいました」と自分の話をしたら、いろんな人が声をかけてくれたんです。

また、毎月の“つどい”では必ず、自分のわだかまりとか、ちょっと変わってきた自分の話を聞いてほしくてしょうがない。それに対して、みなさんがいろんなことを言ってくれて、人の話が聞けるようになってきました。

僕は“在家仏教こころの会で学んだことを仕事に活かせなかったら、嘘や”と思いました。窓口に来る相手は滞納している人で、事情を深く聞かれたくないのはわかります。

でも、「なんで、こうなったんでしょうね?」と聞くと、「実は、こういうことがあって、払えなかった」。「そうですか。しんどい時もありますよね」って。相手の話を聞き、「これから、ちょっと頑張ってもらえませんか?」という口調に、自然と変わってきました。

うちは資産調査もするので、銀行預金や生命保険も資産として、先に調べているんです。かなりの金額を滞納している人が窓口に来て、「こういうお金があるから、一括でなんとかなりませんか?」と聞いたら、「兄の名義で使えない」と。押し問答になり、「貧乏人をいじめる気か!」と泣き出したんです。

その時に、僕は相手の顔をじっと見て、落ち着くまでなにも言いませんでした。そうしたら、相手が落ち着いてきて、会話ができるようになった。やっと相手の話が聞ける自分になり、一人前かなと思っています。

あと、うちは子供が女の子二人と男の子一人いて、次女は結婚していて、僕は三人の孫のお祖父ちゃんです。だけども、家にいる長女とちょっと折り合いが悪く、“言ってもダメかな!?”と思い、娘にあんまり細かいことを言わなくなったんです。

で、本部系の一泊セミナーでも人の話を聞き、また『法華経セミナー』で「人を喜ばすことが大事」という話を聞き、僕は“家族になにができるんかな?”と思いました。

仕事の帰り、駅でケーキを売っているのが目について、なにげなく買って帰ったんです。すると、娘と息子がニコッと、「ありがとう」と言ってくれて、その笑顔で“あっ、これでええやん”とものすごくうれしくなったんです。

僕はいつの間にか、子供の笑顔が僕を助けてくれていることを感じなくなっていた。でも、娘や息子、妻の笑顔に僕は助けられていた。先ほども言いましたけど、うつが進んでいた人間です。ですけど、今、“家族の笑顔でしあわせなんや”と改めて、つくづく感じています。


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