No.39

父と私、息子と私、人さまと私、
同じ目線で向き合って、
語り合って元気になる。

京都府京都市 平塚力也(49歳)

 自分のいのちの源に目を向け自分を知る。そして、そのありのままの自分を語り、人さまの話を心で聞かせていただく。
  言葉にすれば、こんなに簡単なことなのですが、人の話を聞かせていただくことによって本当に救われてきた私です。
  しかし、どうしてもクリアーできない問題がありました。それは、父とわかり合うことができなかったのです。話をしようともし、話を聞こうともするのですが、できません。できない、何かがあったのです。
  2008年4月初旬に父が体調を崩し入院しました。脳出血でした。命に別状はないものの、左半身麻痺のため、リハビリを要する長期入院になると医師から言われました。家族で手分けをして食事介助などをしていたのですが、3週間ほど経った頃、自然に話をしている父と自分に、ふと気づきました。
  何年ぶりかの感覚でした。この感覚を通じて、一つ気づいたことがあります。それは、私が父を見ていた目線が、今まで常に “下から目線” だったということです。私の心は、「親のくせに……」「俺より年上の男のくせに……」と、同じ人間として父を見ていなかったのです。
  それが、世話をしなければならない状態になった父と向かい合ったとき、一瞬ですが、目線が同じになっている自分を発見しました。
  同じ時期、息子とのやり取りの中でも、目線について感じさせられることがありました。目線を同じにする。わかっていたけども、できていませんでした。
  私の目線は、父に対しては下から、息子に対しては上からだったのです。
  今年、2月21日、父が他界しました。
  父の臨終の時刻は、明け方の4時10分頃でした。夜中の3時半頃、電話の呼び出し音で目が覚め、付き添っていた妹からその一報を受けた後、母と妻を起こし、車で病院に向かいました。チラチラとこな雪が舞っていたのを今でも覚えています。
  闘病していた十カ月間での関わり合いを通して、同じ目線で向き合えるようになっていたおかげで、私は父を何の悔いもなく送ることができました。父も同じ思いだったと確信しています。
  また、私は長男として、父が生きている間から葬儀社や檀那寺のご住職とも打ち合わせを済ませたりしていたので、自分の気持ちは整理ができていると思いこんでいました。
  ところが、です。
  初七日を過ぎて少し経った頃から、深夜の時刻に目が覚めると、父の危篤の一報から自宅に連れて帰って来るまでのことが順々に頭に浮かんできては、言いようのない思いにかられるようになりました。
  心がつらい。それ以外に的確に表現できる言葉が見つかりません。
  それがきっかけで、毎日のお経とは別に、青経巻で、父にだけの供養を始めました。一字一句の言葉を、ていねいにゆっくり読み、そして、その内容を父とやりとりするようにしながら……。
  するとです、心が癒されていくのです。
  あわせて、私には心を開いて話ができる家族や在家仏教こころの会の仲間がいます。つどいやお逮夜で、私はみんなに一部始終を、心がつらいことを話しました。50歳前のいいオッサンが、普通ならみっともない話ですし、以前の肩肘張って生きていたときの自分だったら、絶対に他人に弱みをさらすようなことは言えませんでした。
  しかし、自分が心を開いて話をすることで、みんなも自分自身の話をしてくれます。突然に息子さんを亡くした経験のある女性は、同じように青経巻をあげ続け、心が癒えるのに一年かかった話をしてくれました。
  また、別の男性は父親を亡くしたときの赤裸々な思いを聞かせてくれます。励ましやお悔やみの言葉ではなく、みんなが自分の話をしてくれるのです。
  人として、人と同じ目線で向き合う。そして人の話を心で聞かせていただく。その行いを通じて、私は自分の心が傷ついていることを知ると同時に、その傷ついている心が癒され、元気になっていくのを感じました。今も感じています。

(『大きな乗りもの』 2009年5月号)

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