film
大雪の夜に。
小谷康恵
 先月の1月24日に大雪が降って、もう見る見るうちに、短時間ですごく雪が降ってきたんです。夫は会社へ行くのに車で20分ぐらいかかるんですけど、帰りがもう全然、帰って来なくて、結局、1時間40分かけて、帰って来ました。
 私はアパートに住んでいて、下が駐車場になっているので、2階からずーっと雪の状況を“どんなにか!?”って、ずーっと見ていたんです。
 で、夫も帰ってきて、二人、お風呂も入って、ゆっくりしていて、アパートの住人の車が1台も帰って来ないから、それも気になり、カーテン開けて、ずーっと見ていたら、12時前にやっと1台、帰って来ました。
 だけど、その時点で雪が30センチから40センチぐらい積もっていたので、駐車場に入れない状態だったんです。私が「あの人、車が入れんで大変そう」って言っている間に、夫はジャンバーを着たり、自分でいろいろと着込んで、飛び出して行ってしまったんです。
 “なにするんか?”と思っていたら、夫は一生懸命、その人の手伝いをして、雪かきをしたり、警備員のように誘導したりしていて、私はずーっと暖かい部屋で、カーテンからずーっと覗いて、見物人のようにただ見ていたんです。
 そしたら、また、次の住人が帰ってきたら、車が全然、10センチも動かなくなってて、夫は一生懸命に車を押しているけど、誰も手伝ってあげないからにっちもさっちもいかない状態で、本当に困っていたんです。それでも、私は暖かーい部屋で、カーテンからずーっと見ていたんです。
 それよりも、夫がお風呂から上がったばかりで、私は“湯冷めして、風邪ひくんじゃないか!?”って、そのことの方が心配で……。夫が帰って来たら、全身雪だらけで、「なんで? 風邪ひくがぁ!」と夫がしたことを良いことだと思わず、「風邪ひいて、どうする!?」と責めてしまいました。

 その夫が手伝ってあげたアパートの住人は、挨拶も全然しないし、顔を合わせても、会釈もしない人だったんです。
 次の日も雪がいっぱいで雪かきをしていたんですけど、その人が夫の車が出るところだけ雪かきをしてくださっていて、その後に“ピンポン”って鳴らされるから“なにか?”と思ったら、すごい有名なスィーツを持って来てくださったんです。
 で、私が居たから「助けていただいて、本当に感謝しています」と、感謝の気持ちで深々と頭を下げられて、私はなんにもしていないんですけど、「いや、もう、お互いさまで。こういう時は、本当に助け合って」って。そう言っている自分が後ですごく恥ずかしくなって……。いただいたスィーツは、後で夫と二人で美味しくいただきましたが……。
 その時に、夫が「“困っている人があったら、なんとか助けてあげたい”という気持ちが子どもの頃からあって……」と。結婚して17年ぐらいが経つんですけど、そういう話を今までしたことがなくって、これを機会に夫の生まれ育ってきた、小学校、中学校、高校の出来事をずーっと聞いて、“すごいな! 本当にこころから尊敬できる!”って。

 私はもう何十年も在家仏教こころの会にドップリとつかっていて、いっつも、“人のために、何か役に立ちたい。何かをしたい”と、こころの中で思っているんです。その私は、いざという時、人が困っている時には“自分は風邪をひいたらいけないから”と暖かい部屋でただ見ているだけ。でも、夫はなりふり構わず、助けに行く、この違いは一体なんだろう? って。
 夫は年に1回か、2回しか、つどいに出てくれない。どうして、在家仏教こころの会をこんなにやってくれないんだろう? と、不満ばっかり思っていて……。私は欠かさず、つどいに出て、人の話をよく聞いて、私はやっているー! って言っていて、自己満、ただの自己満足っていうのが、もう恥ずかしくて、恥ずかしくて……。
 夫に対して、今までも尊敬していなかったわけではないんです。だけど、やっぱり、尊敬できる部分を見つけたら、言葉にしても、態度にしても、ちょっと自分なりに変化がでてきて、今回、本当、自己満足だったことに気づいたし、夫のすごく良い部分も見つけられたので、大変だったけど、なんか、すごくいい経験ができたなぁって、今、思っています。
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