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感謝
井上 貢
 昨年10月、ちょっと体調が悪くて、病院に行きました。そうしましたら、まず、「病状はどなたに話しますか?」って。「いや、本人に話してください」と言って、「肺がんです」と。「肺がんが骨に転移しています。なんで、まぁ、放射線治療して、抗がん剤治療しましょう」ということでした。
 その時によく分かんないので、「あの、ステージで言うといくらですか?」って聞いたんですね。そしたら、「ステージ4です」と言われました。「だから、治療しながら、最後は“緩和ケア”も考えなきゃいけないですね」って言われて、すごいショックでしたね。その時、“ガーン”って。
 で、入院しまして、“抗がん剤”、“放射線”をやりました。放射線治療を初めてやった時の副作用がすごかったですね。もう苦しくて、“治療しなくていい!”と思いました。“こんな治療だったら、やらなくていいから楽にしてくれ”っていう気持ちでした。
それが終わって2ヶ月前、「ちょっと、違う治療をしてみましょう」ということで、ある遺伝子細胞だけをやる薬があるんです。非常に高い薬です。たかが、小さいカプセル2個と錠剤1個を朝晩、飲むだけなんですね。それを1ヶ月続けまして、結構、数値が良くなったんですね。
 今、3ヶ月目ですけども、先日、病院に行って、肺のレントゲンを見ましたら、肺にできていたがん細胞が小さくなっていたんです。で、進行もストップしているということで、この治療を続けていくことにはなったんですけども、私はがん、肺がんになって、その時に考えたのは“あと、自分がどのくらい生きられるのかな?”、あと、“生きている間に何をしようかな?”と。
 それと同時に、気持ち的にすごく、みんなに“感謝”をしたい。家内にも“ありがとう”、友人にも“ありがとう”、娘、息子にも“ありがとう”。そして、これまで生きてくると、やっぱり、若い頃、迷惑かけた方々がいるわけですよ。“あぁ、あの時、あの人に悪いことしたなぁ。この人にも悪いことしたなぁ。そういう方たちに謝りたいなぁ”と。
 ただ、残念ながらもう亡くなっている方たちもいますから、そういう方たちはあれですけども、本当に感謝の気持ちをいつも、もてるようになりました。
 たとえば、花見に行く、どっかに行く、家族で行った時に“来年もこの桜が見られれば、良いな”っていう気持ち。“今日はここに来られて、良かったなぁ。連れて来てくれて、ありがとう”っていう気持ち。そういう気持ちになったら、非常に“楽”になったっていうか、“がん、なんてなんだ!”って。
 だから、今、本当に調子が良いんです。大好きな焼肉屋に行って、極辛の冷麺も食べてるし、もうすごく食欲もあって、体調も良くて、で、“こころの会”に入って、本音でみんなと話し合いながら、本当に“ありがとうっていう気持ちが自分に芽生えてくる、それが大事なことだなぁ”というのを感じました。
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